カンボジア観光予測レポート
カンボジアの観光事情において、過去10年間を考察すると、年平均12%という驚異的な成長率を誇っている。
2018年度には620万人に及ぶ旅行者が世界中から訪れており、2017年度よりも10.7%の成長率となっている。それらが及ぼす観光収入は約4,375百万ドルに及び、カンボジア王国のGDPの割合として12.3%をしめている。
2019年度には660万人(2018年度より6.6%増加)の旅行者があり、その観光収入は4,919百万ドル、カンボジア王国のGDPの割合として12.1%をしめている。
国内旅行者は11.3百万人(2018年度より2.3%増加)、観光産業に従事する者の直接雇用は630,000人となっている。
2020年度の上半期は、118万人(2019年度より64.6%増加)の海外旅行者を受け入れていたが、新型コロナウイルスの影響もあり、観光省としては次の3つのシナリオを想定している。
- 第1シナリオ 50~60%減となり、250万人程度の旅行者数となる。
- 第2シナリオ 60~70%減となり、200万人程度の旅行者数となる。
- 第3シナリオ 70~90%減となり、150万人程度の旅行者数となる。
現在の新型コロナウイルスの状況をふまえると、第3シナリオになると考えられるが、その場合、
1)30億ドルの減収
2)観光産業におけるGDPの割合は10%程度と減少
3)観光施設の閉業や、失業者の増加。2020年7月までに3,135軒の観光施設が閉業した。施設には、ホテル、ゲストハウスなどの宿泊施設、マッサージ店、飲食店、カラオケ店、ビアガーデンなども含んでおり、約11万人(観光産業従事者の15~20%)が失業している。
特に、観光客が利用するマッサージ店、スパ、カラオケ店、ディスコ、ビアガーデンなどの業界では、ほぼ100%が失業している。
また、観光ガイドにおいては、ライセンス保持者の3%は更新を希望しない状況となった。
2021年度のカンボジアへの旅行者数は25~35%程度の増加となると考える。その場合、発生する収入は20億ドル程度となり、GDPの10%程度となる。また観光産業における直接雇用は50万人程となる。
2022年度のカンボジアへの旅行者数は2021年度より20~30%程度の増加となると考える。
2023年にカンボジアで開催予定の東南アジア競技大会には、多くの外国人旅行者が訪れると考えており、2022年度より30~35%の増加を見込んでおり、合計では250~350万人が訪れると考えている。
2003年に発生したの重症急性呼吸器症候群(通称サーズ)と新型コロナウイルスとの比較:
- サーズは6か月程度で収束したのに対し、新型コロナウイルスに関しては未だ収束の兆しはまだ見えていない。
- サーズは26カ国で市中感染し、感染者8096人中774人(6%)が亡くなった。新型コロナウイルスに関しては現在でも感染が拡大している状況となり、比較はしづらいが、感染者の3.9%が亡くなっている。(2020年7月現在)
- サーズは国家間の移動規制を伴わず収束したが、新型コロナウイルスは多くの国が規制を行っている。
- サーズは国際的に4百万人の旅行者の減少を及ぼし、300~500億ドル程度、国際経済に影響を及ぼしたが、コロナウィルスでは旅行者自体もゼロに近い状況となっており、国際的な経済への影響は計り知れないものとなっている。
-結論-
新型コロナウイルスの影響は、カンボジア王国だけでなく世界中のすべての国の経済、産業に強烈なインパクトを及ぼしている。それによりカンボジア王国の観光産業の回復においてはウイルス問題の収束後3年から5年程度必要と考えており、結果7年程度はそれらの影響を受けると考えている。
それらの対策としては、
- 自国民による国内旅行を強化することで、観光経済効果を促進。
- 国民への「新しい生活様式」の提案、促進。
- 新型コロナウイルスの影響により、カンボジア経済の主軸である観光に大きな影響を及ぼしていく。
2020年7月
カンボジア観光省統計局